サイレントカスタマーにどう対応していけばよいのか?予測NPSの動向について
みなさま、こんにちは! NTTコムオンラインの光安です。
今回は、NPS®プログラムが軌道にのり、全社的な動きになってきた企業が直面する課題の1つである”サイレントカスタマーにどう対応していけばよいのか?”という点と、その対策として期待されている予測NPSについてお話します。
サイレントカスタマーとは?- 既存顧客を失うリスク
サイレントカスタマーとは、企業やサービスへ不満があってもそれを口にせず、黙って去ってしまう顧客のことを指します。不満を感じた顧客の中には、苦情を言う人と、苦情を伝えることなく黙って去る「サイレントカスタマー」の2つのパターンがあります。
苦情を申し立てた顧客であっても、適切に対応した場合、リピーターになる確率が高まります。弊社が実施した「NPSベンチマーク調査2021通販化粧品部門」の結果をみても、苦情を伝えて問題が解決した顧客は、NPSや再購買率は高くなっています。
一方で、不満があっても申し出てない顧客は8割と多いうえに、ロイヤルティが著しく低く、再購買率も低いことがわかっています。
不満なことを伝えてくれたら改善はできますが、何に不満を感じたのかわからないまま解約になってしまうと、サービスや顧客体験の改善につなげられず、さらに顧客を失うといった悪循環に陥ります。サイレントカスタマーを放置すると、問題に気づかないまま既存顧客を失うリスクが高まるため、対策が必要です。
サイレントカスタマーへの対策とは?
サイレントカスタマーとなってしまう要因として、不満や疑問があっても「聞きにくい」、「言いづらい」ということがあげられます。対策として、次の3つをご紹介します。
問い合わせをしやすい環境を整える
顧客が不満を持った場合に、手間をかけずに少しでも声を伝えやすい環境を整えることが大切です。
問い合わせ先をわかりやすくしたり、問い合わせの手間をかけさせない入力方法を用意するなどです。
また、問い合わせがあったときのスピーディな対応と問題解決力を高めることも重要となります。
アクティブサポートを行う
顧客自身が問い合わせを行わないのであれば、SNSで顧客が発信したメッセージに対し返信するなど、企業側から能動的にサポートするアクティブサポートも有効です
NPSアンケートで不満を察知する
サイレントカスタマーの不満を察知する方法として最近主流となっているのが、NPS(Net Promoter Score)※です。NPSで批判者を特定し、不満点をとらえCXを改善することで、離反を防ぐといった取り組みがなされています。
サービス利用やお問い合わせなど顧客体験の直後にトランザクショナル調査を行い、不満をいち早く察知し、スピーディにアクションをうつことで解約率の低減につなげているケースもあります。
アンケート未回答者への対応が課題
NPS導入企業では、苦情を伝えない顧客であっても、アンケートに回答してくれている場合には、不満を察知しアクションをとることができます。ただ、多くの企業では、NPSアンケートの回答率は5~20%程度と低いのが現状です。
これは、2割程度の顧客の声にしか対応できておらず、残り8割を超える顧客の不満などは捉えられていないということを意味します。NPSアンケートの回答率が低いと、一部の顧客の声をベースに顧客全体に影響をあたえる意思決定を行ってよいのかという疑問も生じます。
NPSの活用が定着し、CX改善に注力している企業においても、8割を超えるアンケート未回答顧客への対応は、依然として大きな課題といえます。
機械学習で未回答顧客のロイヤルティを予測する
こうした背景から、NPSの活用が先行する欧米企業では、アンケート未回答顧客のロイヤルティを予測する動きが始まっています。
予測NPSは、機械学習で顧客に関する構造化データと非構造化データからモデルを構築し、アンケートには答えていない顧客のNPS(推奨者・中立者・批判者)を予測します。
予測にあたって、インプットするデータとしては、以下などがあげられます。
予測対象であるNPSがラベル付けされたデータを目的変数とし、顧客属性データや取引履歴、利用履歴などの行動データ、テキストデータなどを説明変数(特徴量)として学習させ、予測モデルを作成します。
予測NPSの機械学習のアルゴリズムには、ランダムフォレストや勾配ブースティングなどを使用します。海外の事例では、NPSの予測精度が80%を超えるケースもでています。
機械学習に求められる最も重要なことは予測精度ですが、解釈性が重要になるケースも多いです。従来、機械学習は、どのような根拠で予測を行ったかというのがブラックボックスとなり、“なぜその結果になったのか、理解することが難しい”といわれることが多く、解釈性が低いといった課題がありました。
最近は、予測結果を解釈する新たな技術として、Local Interpretable Model-Agnostic Explanations (LIME) や SHapley Additive exPlanations (SHAP) などが活用され、特徴量と施策立案の関係を思考レベルで結び付けやすくなってきています。
予測NPSにおいても、影響を与えている要因を特定するために、これらの手法が使われています。
予測NPSの活用メリットとは?
予測NPSを活用する主なメリットとしては、次の3点があげられます。
サイレントカスタマーの不満など予兆を察知できます。解約予備軍を抽出でき解約抑止に向けたフォローが行え、継続率の向上が期待できます。
一部の顧客の声に偏らず、顧客全体の評価をベースに施策立案ができ、アンケートに回答しているか否かによらず、すべての顧客にアクションを実行できます。
アンケート運用コストの削減と同時に、顧客への回答負荷も下げられます。複数のタッチポイントで何度もアンケートが飛んでくることに疲弊している顧客への対策としても有益です。
以上、サイレントカスタマーの不満を察知するために、予測NPSの活用が有効であることをご紹介しましたが、リアルな顧客のフィードバックがより大切であることはいうまでもありません。
それは大前提として、回収率の低さに悩まれていたり、直接的な声を取得できなかったり、コスト面でアンケートが送付できないといった課題を抱えている際には、ぜひ予測NPSの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
弊社では、NPSデータを活用した予測分析のご支援もいたしております。お気軽にご相談ください。