NPS®ってマイナスになるの?NPS®調査って日本には向いてないの?いえいえ、NPSは比較にこそ活用ポイントを見出すべし!
はじめまして!NTTコム オンラインの剣持(けんもつ)です。みなさまのお役に立てる情報をこれから出していければと思っています。どうぞよろしくお願いします。
それでは今回のご質問、
「NPS®ってマイナスになるの?」
「NPS®調査って日本には向いてないの?」
についてお答えしたいと思います。
NPSの計算方法
はじめにNPSの計算方法についておさらいしておきましょう。NPSはアンケート調査にて、「あなたはこの会社(あるいはブランド、商品等)をどの程度、友人や知人に薦めたいと思いますか?」という推奨度に関する質問をして、回答者に0~10までの11段階で回答してもらう調査方法です。推奨度が0~6の回答者を「批判者」、推奨度が7,8の回答者を「中立者」、推奨度が9,10の回答者を「推奨者」と分類します。ここでNPSは
推奨者の割合-批判者の割合=NPS
で計算します。NPSは通常、パーセンテージを省略して表示します。
今、たとえば100人の回答者の内、批判者50人、中立者30人、推奨者20人であった時、
推奨者の割合(20%)-批判者の割合(50%)=-30(%)
となり、「NPSは-30である」ということになります。
推奨者の割合が批判者の割合を下回ればマイナス、上回ればプラスになるというわけですね。
そもそもNPSの数値ってどのくらい?
では「NPSってマイナスになるの?」にお答えするために日本でのNPSの相場がどのくらいなのかについて確認していきましょう。
弊社では「NPSベンチマーク調査」というタイトルで年に10数回、様々な業界のNPSおよびCXに関する調査を行っており、その結果の一部を公表しています。
2021年度は16業界で調査を行いました。業界別のNPSの平均値を青丸で、最大値を緑の線で、最小値を赤の線で表現したものが以下のグラフです。
このグラフを見ると、弊社で調査したすべての業界でNPSの平均がマイナスになっているのがわかります。最も高いネットスーパー業界および通販化粧品業界においてでさえ、-10.7とマイナスになっていますね。この結果から「日本ではNPSは多くの企業でマイナスになる」と考えてよさそうです。
国内と国外でのNPSの違い
「NPSがマイナスになる」という話題とセットでよく出てくるのが「NPSは日本ではマイナスになるが、海外ではプラスになる」というテーマです。そこで米・経済誌フォーチュンが選ぶフォーチュン100企業のNPS分布がどのようになっているのかを以下のグラフで見てみました。
NPSの最大値は79、最小値は-10、平均は8.3でした。74%の企業のNPSがプラスになっているので、確かに「海外ではプラスになる」ことがわかります。ですが、米国のトップ企業の4分の1のNPSがマイナスになっており、NPSが-10~9の間におさまっている企業が約7割もあることを考えると、それほど大きなプラスというわけではないですね。思っていたほど高くなく、個人的にはちょっと意外な感じの結果でした。
なお、ここでのテーマと直接関連しませんが、フォーチュン100企業のうち、96社のNPSが公表されているというところに、米国ではNPSが極めてスタンダードな指標になっていることがうかがい知れますね。
さて、ここで日本人のNPS評価の特徴について見てみましょう。日本人は評価を中間値近辺につける人が多い傾向にあります。よって、日本人を対象に10点満点のNPS調査を行うと、5や6が選ばれやすくなります。NPSでは推奨度6以下が批判者となるため、必然的に批判者の割合が多くなります。これが「日本では海外と比べて実態以上にNPSが低いのでは?」ということになり、「NPS調査って日本には向いてないの?」という疑問につながります。
ここまで見てきた通り、確かにNPSは国内と国外で異なります。ですが、そもそも米国の消費者が評価する米国内企業のNPSと日本の消費者が評価する日本国内企業とを比較する意味があるのでしょうか。同じ企業でも国が違えば提供している製品・サービスが異なることもあります。また、商習慣も競争環境も違うマーケットでNPSを比較する意味はあまりないのではないでしょうか。比較するのであれば、同じマーケットで勝負している企業間で比較した方が良いように思います。
海外の企業が日本に参入してきているのであれば、日本の消費者を対象に海外企業と国内企業について調査を行い、そのNPSを比較・分析することには意味があります。また、日本企業が海外に参入するのであれば、参入国の消費者を対象に調査を行い、その国の企業と参入する日本企業のNPSを比較することにも意味があります。いずれの場合も、製品・サービスを提供する国の消費者から評価されるので、国民性の違いによる評価の差の影響を受けることはありません。このように考えれば「NPSが日本には向いていない」なんてことはないとわかりますね。
NPSは比較して使うもの
どうやらNPSは絶対値を単独で見るものではなく、「様々な切り口や他のNPSと比較して見ていくことが重要である」ということが見えてきました。NPSを様々な切り口で比較し、差が生じている原因について分析・議論する。このことにより顧客に対する理解が進み、マーケティングの新たな対応策案が生まれます。こんな感じでNPSをフルに活用した経営が実現していけば良いですよね!比較する切り口としては以下がよく用いられます。これらをご参考にみなさまの組織でも是非NPSをフル活用していただければと思います。
同業他社比較
NPSは業界ごとに大きく異なりますが、業界内の他社と比較すれば業界特有の影響を受けずに自社と他社の顧客ロイヤルティの違いを分析することができます。
時系列比較
自社内でNPSがどのように変わってきたのか時系列で比較することも効果的です。年度ごとに重点的に実施してきた顧客ロイヤルティ向上戦略やCX戦略の効果測定を行うこともできます。
事業・ブランド・商品間比較
自社内で事業・ブランド・商品ごとにNPSを比較し、事業・ブランド・商品ごとの強み・弱みを明確にする使い方もよく行われています。ただしこの場合、対象顧客層がなるべく類似したビジネスで比較することをおススメします。
顧客属性別比較
性別、年代別、居住地域別などの顧客属性別にNPSを比較することで、顧客属性ごとのロイヤルティ状況を把握でき、顧客理解が進みます。
それでもNPSがマイナスになるのを避けたい方へ
ここまでの話の流れはわかるけれど、それでも「やっぱりマイナスの数字は誤解を生みそうで困る。。。」という方もいらっしゃることでしょう。そのような方に以下の回避方法をご紹介します。
NPSの差を見せる
前年同時期や前四半期などと比較してNPSがどのくらい増減したのかを見せるのは、よく使われる手法です。これまでお話してきた通り、NPSは比較して分析することで効果を発揮するので、増減を示すことは有意義です。ただし、比較の結果、増加していればプラスの値を示せて良いのですが、減少してしまうとやはりマイナスとなります。
推奨度平均を見せる
NPSを算出する基となっている推奨度は0~10までのプラスの数値なので、NPSの代わりにこの推奨度の平均値を示すという考え方もあります。
推奨者比率を示す
推奨者の比率もプラスにしかならないので、NPSの代わりに推奨者比率を示すのも一つの手です。
PSJの活用
早稲田大学大学院の木村達也教授は、先に述べた日本人が評価するとNPSがマイナスになりやすいことを避けるために、推奨度が0~4を「批判者」、5~7を「中立者」、8~10を「推奨者」とする新たなPSJ(Promoter Score Japan)という基準を提示しています。
この考えに則ることもマイナスを示さずにすむ一つの手段として考えられます。ただし、PSJで評価してもマイナスになる可能性があることと、PSJで評価した場合、通常のNPSとは算出方法が異なるため、通常のNPSと比較することはできない点に注意する必要があります。
まとめ
今回のご質問について、お話したかったことは以下です。
日本ではNPSがマイナスになることは多いけれど、NPSはその数値を単独で見ることに意味はなく、様々な切り口で比較することに意味があるため、マイナスであることを気にせず、比較によって得られた示唆を活用するのがポイントです。
NPSを競合企業と比較する場合、製品・サービスを提供する国の消費者からの評価で比較すれば、国民性の違いによる評価の差の影響を受けないので、NPSが日本には向いていないなどということにはなりません。
それでもNPSのマイナスを避けたい場合は、NPSそのものを示さず差を示すか、NPSに類似した新たな指標を活用することによりマイナスを回避できる可能性があります。ただし、通常のNPSと異なる算出方法を用いる場合は、通常のNPSと比較できなくなってしまう点に注意する必要があります。
以上、みなさまのお役に立てれば幸いです。ではまた次のテーマでお会いしましょう!
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